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決算書だけでは見えない「人的資本」、どう可視化し、投資するか?
社会保険労務士法人ワンステップでは、和歌山・奈良・阪南を中心に労務相談、給与計算・社会保険手続き代行、就業規則作成、勤怠管理システム導入、助成金の提案など、人事労務分野の各テーマ別ノウハウに基づいてご支援をさせていただくことが可能です。上記テーマ等でお困りの会社様は、是非一度当法人にご相談ください。
売上・利益だけでは分からない「会社の人材力」を数字で把握する
いつもご覧いただきありがとうございます。
社会保険労務士法人ワンステップです。
会社の経営状況を見るとき、
売上
利益
現預金
借入金
設備
といった数字は、決算書を見ればある程度分かります。
しかし、
「社員のスキルは高まっているか」
「若手が定着しているか」
「次の管理職が育っているか」
「社員が会社の方針を理解しているか」
「特定の社員が辞めたら仕事が止まらないか」
といったことは、決算書だけでは分かりません。
こうした会社の人材に関する価値を、
「人的資本」
という考え方で捉える動きが広がっています。
中小企業が始める人的資本経営と、人への投資を成果につなげる方法
📌 人件費を単なる「コスト」と見るのではなく、人材を会社の将来価値を生み出す「資本」として考えるのが人的資本経営です。
今回は、中小企業でもできる人的資本の可視化と、人への投資の考え方について解説します。
1.そもそも「人的資本」とは?
人的資本とは簡単にいうと、
社員が持っている知識・経験・技能・能力・意欲など、会社の価値を生み出す人材の力
のことです。
例えば、
・営業社員の提案力
・職人の技術
・管理職のマネジメント力
・新人を育てる力
・顧客との信頼関係
・業務改善のノウハウ
・新しい仕事を学ぶ力
などがあります。
これらは会社にとって非常に重要ですが、機械や建物のように貸借対照表へ「資産」として表示されるものではありません。
👉 だからこそ、経営者が意識して「見える化」しなければ、人材の状態が分からないまま経営することになります。
2.「人的資本経営」とは?
経済産業省では、人的資本経営について、
人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営
という考え方を示しています。
つまり、
採用した社員に給与を払う
だけではありません。
採用
↓
育成
↓
配置
↓
評価
↓
処遇
↓
定着
までを一つの経営戦略として考えます。
📌 「今いる社員をどう活かすか」まで考えることが人的資本経営です。
3.人的資本は大企業だけの話ではない
人的資本という言葉を聞くと、
「上場企業の情報開示の話でしょう?」
と思われるかもしれません。
確かに上場企業では、有価証券報告書における人的資本関連情報の開示が進められています。
また、2026年3月には、
「人的資本可視化指針(改訂版)」
も公表されています。
しかし、中小企業にとって重要なのは、
開示することそのものではありません。
「自社の人材にどんな課題があるか」
「どこへ投資すれば会社が強くなるか」
を考えるために活用することです。
👉 中小企業では、外部への開示よりも、まず経営者自身が人材の状態を把握することから始めれば十分です。
内閣官房「人的資本可視化指針(改訂版)」
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/nipponseichosenryaku/hizaimu/pdf/2026/shishin.pdf
4.決算書だけでは会社の「人材リスク」が分からない
例えばA社とB社があったとします。
どちらも、
売上5億円
営業利益3,000万円
だったとします。
決算書だけを見ると、似た会社に見えます。
しかしA社は、
・若手社員が育っている
・管理職候補が3人いる
・業務マニュアルが整っている
・社員の資格取得が進んでいる
一方、B社は、
・重要業務を60代社員1人だけが担当
・新人が毎年辞める
・管理職候補がいない
・業務が属人化している
とします。
この2社では、
5年後の会社の強さは大きく違う可能性があります。
📌 人的資本を見ることで、決算書には表れない将来のリスクを発見できます。
5.まず「人数」だけを見るのをやめる
経営会議で、
「社員は今30人です」
だけ確認していても、人的資本は分かりません。
例えば30人の内訳として、
20代 2人
30代 3人
40代 8人
50代 10人
60代 7人
なら、
「5年後、10年後に技術承継できるか」
という課題が見えてきます。
また、
管理職5人のうち4人が55歳以上
なら、
次の管理職育成も必要です。
👉 人数だけではなく、「年齢・職種・役割・スキル」まで見ることが重要です。
6.何を「可視化」すればいい?
中小企業が最初から何十項目も管理する必要はありません。
例えば、次のような数字から始められます。
採用
・応募者数
・採用人数
・採用単価
・採用までの日数
定着
・離職率
・入社1年以内離職率
・勤続年数
育成
・研修受講時間
・資格取得者数
・教育費
労務
・残業時間
・有給休暇取得率
・欠勤状況
人材配置
・管理職候補者数
・多能工化の状況
・資格保有者数
組織
・従業員満足度
・エンゲージメント
・1on1実施率
📌 重要なのは数字をたくさん集めることではなく、「経営課題と関係する数字」を選ぶことです。
7.例えば「離職率」を見る
社員30人の会社で、
年間6人退職しているとします。
単純に見れば離職が多いと感じるでしょう。
しかし、さらに分解して、
新卒3人
中途入社2人
勤続10年以上1人
だったとします。
すると、
「新しく入った人が定着していない」
という課題が見えてきます。
そこで、
求人票
面接
入社時研修
OJT
入社後面談
を見直します。
👉 人的資本の可視化とは、数字を出すだけでなく「なぜその数字になったのか」を考えることです。
8.「平均勤続年数」だけでは足りない
例えば平均勤続年数が、
12年
だったとします。
一見すると定着率が高そうです。
しかし、
勤続20年以上の社員が多い一方、
ここ3年間の中途採用者は半分以上辞めている
という会社かもしれません。
その場合、
「昔からいる人は辞めない」
一方で、
「新しく入る人が定着しない」
という問題があります。
📌 平均値だけでなく、年代・職種・入社年次などに分けて見ることも大切です。
9.「誰が何をできるか」を一覧にする
人的資本を可視化するうえで、中小企業におすすめなのが、
スキルマップ
です。
例えば製造業なら、
| 社員 | 機械A | 機械B | 検査 | 段取り | 新人指導 |
|---|---|---|---|---|---|
| Aさん | ◎ | ◎ | ○ | ◎ | ○ |
| Bさん | ◎ | △ | ◎ | △ | × |
| Cさん | △ | × | ○ | × | × |
という形です。
これを見ると、
「機械Bを扱える人がAさんしかいない」
「新人指導できる人が少ない」
と分かります。
👉 人的資本の可視化は、資格の数だけでなく「実際に仕事ができる人が何人いるか」を見ることが重要です。
10.「属人化」も人的資本のリスク
例えば、
「給与計算は○○さんしかできない」
「この機械の修理は△△さんしか分からない」
「主要顧客との関係は社長しか持っていない」
という状態です。
その人が、
退職
休職
病気
になった場合、業務が止まる可能性があります。
📌 優秀な社員がいることと、その人にしかできない状態は別問題です。
そこで、
・マニュアル作成
・複数担当制
・ジョブローテーション
・OJT
・後継者育成
などへ投資します。
11.研修費を増やせば「人的資本投資」になる?
研修費を増やすだけでは十分ではありません。
例えば100万円かけて研修を実施しても、
社員が、
「何のために受けたのか分からない」
「仕事で使う機会がない」
という状態なら、投資効果は高まりません。
👉 研修は「会社が必要とする能力」と結びつけることが重要です。
例えば、
今後ネット販売を強化する
↓
Webマーケティング担当を育成する
↓
研修を受講する
↓
自社サイト改善を担当する
という流れです。
12.人への投資は「研修」だけではない
人的資本投資というと、
研修費
資格取得費
をイメージしがちです。
しかし、それだけではありません。
例えば、
・新人を教育する時間を確保する
・1on1を行う
・管理職研修を実施する
・業務マニュアルを整備する
・新しい仕事へ挑戦させる
・配置転換を行う
・ITツールを導入して単純作業を減らす
・評価制度を整える
これらも人材の価値を高めるための投資と考えられます。
📌 「人にお金を使うこと」ではなく、「人が能力を発揮できる状態を作ること」が重要です。
13.教育費だけでなく「教育時間」も見る
中小企業では、
「研修費はあまり使っていない」
という会社もあります。
しかし、
先輩社員が新人へ毎日1時間教えている
のであれば、それも会社が使っている重要な経営資源です。
例えば、
1時間 × 20日 × 3か月
= 60時間
です。
👉 研修費だけでなく、OJTや教育に使っている時間も人的資本投資として考えてみましょう。
14.投資後の変化まで確認する
例えば管理職研修を実施したとします。
研修を受けた人数だけを管理すると、
「10人受講しました」
で終わります。
しかし本当に見たいのは、
・1on1実施率が上がった
・部下からの相談が増えた
・残業時間が減った
・離職率が改善した
・社員アンケートの上司評価が上がった
といった変化です。
📌 「何をしたか」だけでなく、「何が変わったか」を見ることが重要です。
15.採用費も「投資対効果」で考える
例えば、
求人広告 50万円
人材紹介料 100万円
社員紹介制度 10万円
を使ったとします。
費用だけ見ると社員紹介制度が最も安く見えます。
しかし、
採用後3年定着した人数
仕事を覚えるまでの期間
入社後の評価
まで見ると、結果が変わるかもしれません。
👉 人的資本では「採用にいくら使ったか」だけでなく「どんな人が採れ、定着したか」を考えます。
16.賃上げも人的資本投資の一つ
人への投資を考える際、
研修制度だけ充実させて、
給与水準が市場と大きくずれている
という状態では、人材確保が難しくなります。
そのため、
・基本給
・昇給制度
・賞与
・手当
・評価制度
なども含めて考える必要があります。
例えば、
資格を取得した
↓
担当できる業務が増えた
↓
評価が上がる
↓
賃金へ反映される
という流れを作ります。
📌 「学んでも何も変わらない」では、社員も教育に前向きになりにくいでしょう。
17.社員アンケートも人的資本の可視化になる
数字だけでは見えないものもあります。
例えば、
「会社の方向性を理解しているか」
「上司へ相談しやすいか」
「評価に納得しているか」
「成長できていると感じるか」
「今後もこの会社で働きたいか」
などです。
これらは従業員アンケートを使って確認できます。
例えば5段階評価にして毎年同じ設問を聞けば、
前年との変化も確認できます。
👉 社員の「感じ方」も、継続して測定すれば重要な経営指標になります。
18.健康や働きやすさも人的資本
社員が高い能力を持っていても、
長時間労働が続いている
有給休暇を取れない
体調不良者が多い
という状態では、十分に能力を発揮できません。
そこで、
・時間外労働
・有給休暇取得
・健康診断受診
・ストレスチェック
・休職、復職状況
なども確認します。
📌 人材を「持っている能力」だけでなく、「継続して働ける状態か」という視点で見ることが重要です。
19.女性活躍や多様な人材の活用も確認する
例えば社員の半分が女性でも、
管理職は全員男性
という会社があります。
その場合、
「管理職候補となる人材の育成や登用が十分か」
という視点が生まれます。
また、
・育児中の社員
・高年齢者
・障害者
・外国人社員
・短時間勤務者
など、多様な人材が能力を発揮できているかも確認します。
👉 人数をそろえることではなく、それぞれの人材を活かせているかを見ることが大切です。
20.人的資本を「経営目標」とつなげる
ここが最も重要です。
例えば会社が、
5年後に売上を1.5倍にする
という目標を立てたとします。
そのためには、
営業担当者 現在5人 → 8人
管理職 現在2人 → 4人
専門資格者 現在3人 → 6人
が必要かもしれません。
すると、
現在の人材
と、
将来必要な人材
の差が見えます。
📌 この差を埋めるために、採用・教育・配置・賃金へ投資するのが人的資本経営です。
21.「経営戦略→人材戦略」の順番で考える
人的資本経営でありがちな失敗が、
「最近リスキリングが流行っているから研修しよう」
という進め方です。
まず、
会社がどこへ行くのか
を決めます。
例えば、
新規事業を始める
↓
必要な能力を整理する
↓
社内にその能力があるか確認する
↓
不足分を育成・採用する
という順番です。
👉 研修メニューから考えるのではなく、経営戦略から逆算しましょう。
22.「将来必要な人数」を考えてみる
例えば現在、
社員30人
の会社だとします。
5年後、
社員40人
を目指しているなら、
単純に10人採用すればよいわけではありません。
5年間に退職者が5人出るなら、
必要採用数は15人です。
さらに管理職が2人退職予定なら、
管理職候補の育成も必要です。
📌 将来の組織図を先に作ると、今から何をしなければならないか見えやすくなります。
23.最初から立派な「人的資本レポート」は不要
中小企業が人的資本経営を始めるために、
何十ページものレポートを作る必要はありません。
まずExcel一枚でも構いません。
例えば、
人員
社員数 30人
採用
年間採用 5人
離職
年間退職 4人
うち入社1年以内 3人
育成
年間研修時間 1人平均8時間
管理職
現在4人
5年以内退職予定2人
候補者1人
残業
月平均12時間
有休
取得率65%
という程度です。
👉 毎年同じ数字を並べるだけでも、会社の変化が見えるようになります。
24.数字には必ず「目標」を置く
例えば、
離職率 15%
という数字だけでは、
良いのか悪いのか判断しにくいでしょう。
そこで、
現在15%
↓
来年12%
↓
3年後10%
という目標を設定します。
同じように、
資格者3人 → 5人
管理職候補1人 → 3人
有休取得率60% → 70%
などとします。
📌 現状→目標→施策→結果という流れを作ることで、人への投資が経営管理になります。
25.すべての数字を良くする必要はない
人的資本の指標をたくさん作ると、
「全部改善しないといけない」
と思いがちです。
しかし、経営資源には限りがあります。
例えば今年は、
若手の定着
を最重要課題にする。
そのために、
入社1年以内離職率
1on1実施率
OJT進捗
を見る。
翌年は、
管理職育成
を重点課題にする。
という方法でも構いません。
👉 自社の経営課題に合わせ、重要な指標を3~5個程度選ぶところから始めましょう。
26.助成金を活用できる場合も
人材育成への投資については、取り組み内容や年度の要件によって、
人材開発支援助成金
などを活用できる場合があります。
例えば、
・従業員への職業訓練
・事業展開に必要なリスキリング
・デジタル分野等の人材育成
などについて、訓練経費や訓練中の賃金の一部が助成対象となる場合があります。
ただし、
研修を受ければ必ず助成されるわけではありません。
対象となる訓練、労働者、実施方法、申請時期などの要件があります。
📌 助成金を活用する場合は、研修を開始・契約する前の段階で制度を確認することが重要です。
27.まずは「人材の棚卸し」から始める
人的資本経営という言葉を難しく考える必要はありません。
まず、
① 現在何人いるか
② 誰が何をできるか
③ 誰が辞めると困るか
④ 3年後・5年後にどんな人材が必要か
⑤ 今足りないものは何か
を整理します。
ここまでできれば、
採用するべきか
育成するべきか
配置を変えるべきか
待遇を見直すべきか
が見えてきます。
👉 これが中小企業にとっての人的資本経営のスタートです。
28.社会保険労務士法人ワンステップに相談するメリット
社会保険労務士法人ワンステップでは、和歌山・奈良・大阪を中心に、
・人材の現状分析
・離職率等の人事データ分析
・従業員アンケート
・スキルマップの作成
・人事評価制度の構築
・賃金制度の見直し
・管理職育成
・1on1、面談制度の構築
・研修計画の作成
・人材育成に関する助成金
など、人材を「採用して終わり」にしない仕組みづくりをサポートしています。
「人材にどれくらい投資すればよいか分からない」
「社員はいるが、次の管理職が育っていない」
「研修をしても成果が見えない」
「離職率や人材育成を数字で管理したい」
という企業様もお気軽にご相談ください。
👉 社会保険労務士法人ワンステップ
https://www.onestep-sr.jp/
29.まとめ
決算書を見れば、
売上
利益
資産
借入金
は分かります。
しかし、
社員が育っているか
技術が継承されているか
若手が定着しているか
次の管理職がいるか
社員が能力を発揮できているか
は分かりません。
そこで必要になるのが、
人的資本の可視化
です。
まずは、
① 人数・年齢構成を確認する
② 離職や採用の状況を見る
③ 誰が何をできるか整理する
④ 将来必要な人材を考える
⑤ 現状との差を確認する
⑥ 採用・教育・配置・処遇へ投資する
⑦ 投資後に数字がどう変わったか確認する
という流れで進めます。
📌 人的資本経営とは、難しい指標をたくさん作ることではありません。
「5年後、この会社を支えてくれる人は育っているだろうか?」
この問いに、感覚ではなく数字を使って答えられる状態を作ることです。
機械なら、古くなれば設備投資を検討します。
人材も同じように、
今の状態を確認し、将来必要な力とのギャップを見つけ、計画的に投資する
ことが必要です。
👉 まずは社員一人ひとりについて、「現在できる仕事」と「3年後に任せたい仕事」を書き出すところから始めてみてはいかがでしょうか。
労務問題対策には専門家の支援を
当法人では、企業様に顧問社労士契約を推奨しております。労務・手続き・助成金に強い顧問社労士をつけることで、労務問題を迅速に解決するだけでなく、給与計算や諸手続きにかかる総務部門の間接コストを削減することができ、経営に専念できる環境を整備出来ます。その他にも受給できる助成金の提案・申請代行や各種研修の実施・最新情報提供など、様々なメリットがあります。 詳しくは、【サービス紹介】をご覧ください。
実際に顧問契約をご締結いただいている企業様の声はこちら【顧問先インタビュー】


















